居候同期とフクザツな恋事情
「こういうの、並ぶの平気?」
「全然。もうこんなに人が並んでるってことは、期待大じゃん」
不安な面持ちで訊ねたら、イオが笑顔で前向きな言葉を返してくれたからほっとした。
「俺らも早く並ぼう」
イオにちょいっと服の肩のところを引っ張られて、促されるように列の最後尾に並ぶ。
ふたりで列に並んでいると、通知が届いたらしく、イオがスマホを出して触り始めた。
メッセージのやりとりが続いているのか、イオはなかなかスマホから顔をあげない。
別に、イオは彼氏でもないし。友達っていうほどでもなくて。うちに居候してる、ただの同期だし。
だから、構ってもらいたいとかそういうわけじゃないけど。
列に並びながら、私は特にすることもないし。黙って待っているのはなんか、つまんない。
スマホを触るイオの隣でぼんやり待っているあいだに、列が少しずつ前へと進んでいく。
このままお店に入るまで、ずっと顔あげてくれないのかな。
別にいいんだけど。少しだけ、モヤモヤする。