居候同期とフクザツな恋事情
気になるメニューをいくつか見ながら悩んでいると、不意に手元のスマホ画面に陰が落ちた。
「メェちゃん、どれにするの?」
思っていたより近くからイオの声が聞こえてきたから驚いて顔をあげる。
そうしたら、背中を丸めたイオが真正面から私のスマホを覗き込んでいたから、もっとびっくりして心臓が止まりそうになった。
反射的にずずーっと後ずさると、背中に何かがぶつかる。
だけどイオは、距離をとろうとする私の手首をつかむと彼のほうへと軽く引っ張った。
「ちょっ、イオ。なに……」
「すみません」
動揺して焦った私が手を振り払おうとすると、なぜかイオが、私を通り越して向こう側の誰かに謝罪する。
振り向くと、私たちの後ろに並んでいた同年代くらいの女の人が、腕にかけていたカバンを引き寄せているのが見えた。
もしかして、私がさっき後ずさったときにぶつかった──……?