居候同期とフクザツな恋事情



「メェちゃん、他のお客さんにぶつかるよ?」

イオに呆れ顔で見下ろされて、恥ずかしくなる。


「あの、すみません……」

「いえ、全然。大丈夫です」

改めて私からもちゃんと謝罪すると、ぶつかった女の人が手のひらをぶんっと横に振った。そのとき、イオのことをちらっと気にするような素振りをみせる。

イオは気付いていなさそうだったけど、彼女がイオに好意的な目を向けているのは明らかだ。

イオは今フリーだから、彼女の好意をイオに教えてあげたら……

イオは永田さんへの気持ちを捨てて、新しい恋に進んでいけたりするのかな。

そんなことを考えたのは自分のくせに、イオが彼女に優しく笑いかけるところを想像したら、すごく不快な気持ちになった。

やっぱり、なにも気付いてないイオに余計なことは教えるのはやめよう。

腕をグッと引っ張って前を向かすと、イオの顔が彼女の視界に入らないようにする。

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