居候同期とフクザツな恋事情



「まだ、迷い中」

イオから半歩ほど距離をとってから一呼吸置くと、そこから彼に近付きすぎないように気を付けながら、スマホの画面を覗き見る。


「迷うよね。どうしよっかな。俺はこっちか、こっちかなー」

スマホの画面をタップしながら、パンケーキのメニューを眺めているイオの横顔をジッと見つめる。

口角をあげて話しているイオの横顔は、無邪気で楽しそうだ。

その横顔に、つい惹き付けられてしまっている自分にハッとする。

イオとふたりでこんなふうに出かけるのが初めてなせいか、今日の私は少しおかしい。

さっきイオの腕を、衝動的に引っ張ってしまったのだって、今考えると、イオが笑った顔を他の人に見せたくないってほんの一瞬思ってしまったからだ。

でも、こんなのはきっと今だけの気の迷いに決まってる。だって私自身、自分の行動の意味がわからない。



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