居候同期とフクザツな恋事情
「な、なんで松野くん?」
「だってメェちゃん、好きなんでしょ?せっかくのチャンスを少しは利用できたのかなーって」
人のことを揶揄うように、にこにこ笑うイオに、なぜだかとても複雑な気持ちになった。
「利用っ、て。人聞き悪いこと言わないでよ。昨日は、絢子の結婚祝いの飲み会だったし。先輩たちに気を回すことで手一杯だったから」
「えー、隣に座ってしゃべるとかしなかったの?」
「まぁ、近く……には座ってたけど」
「おー、そうなんだ」
すいっとイオから視線を逸らしてみたけど、彼のにやけた顔が視界の端でチラつく。
私と松野くんになにを期待しているのか知らないけれど、イオのニヤケ顔が微妙にムカついた。
結論をいうと、飲み会のときに私と松野くんは向かい合った席に座っていたけれど、だからといって特別な進展はない。
ふたりして、先輩たちのグラスが空いたらオーダーを確認したり、様子を見て料理の追加をしたり。
私たちが一番年下だったから、そういう気遣いで忙しかったのだ。