居候同期とフクザツな恋事情


せっかく立ち直ってきてるなら、このままなにも話さずにいるほうがいい、よね?

昨夜の滝宮さんの話を思い出しながら、向かいに座るイオの顔をチラッと見たとき、私たちの前にそれぞれパンケーキが運ばれてきた。


「おー、美味そう!」

「ほんとだー」

パンケーキの魅力的な見た目と、甘い香りに、思考が完全にそちらへと奪われる。

パンケーキの写真を撮るのも早々に、待ちきれずにパクついていたら、シャッター音がした。

フォークを持って半口を開けたまま顔を上げると、スマホを構えていたイオがまたシャッターを切る。


「ちょっと、食べてるところ撮らないでよ」

慌てて顔の前に手を出した私のことを笑いながら、イオがさらにもう一度スマホカメラのシャッターを押した。


「だってメェちゃん、すげぇ幸せそうに食べてるから」

「頬張ってて、変な顔じゃん」

イオが見せてきたのは、私がちょうどパクッとフォークを口に入れた瞬間の写真だった。

< 129 / 240 >

この作品をシェア

pagetop