居候同期とフクザツな恋事情



「いや、たまには夜ごはん作ろうかなと思って」

「それって、俺の分も?」

イオが期待でキラキラさせた目を向けてくるから、気まぐれに沸いた親切心が途端に恥ずかしくなる。


「け、経済的なことを考えてだよ。ひとり分だと食材余しちゃうから、たまにしか自炊しなかったけど、ふたり分だと作りやすいし?」

それに、これはなんていうか……居候のイオへの親心?みたいなもんだから。

イオ、なんにもできないし。

心の中でそう言い聞かせながら、洗剤のついたスポンジを何度もぎゅーぎゅー握る。


「メェちゃんが作ってくれるなら、これから毎日仕事早めに終わらせて帰ってくるようにしよっと」

意味もなくずっと、スポンジをぎゅーぎゅーしていると、イオが鼻歌まじりで嬉しそうにそんなことを言うから、勝手に胸がドキッと鳴った。

私がごはん作ってあげたら、早めに帰ってきちゃうんだ。

なんだかそれってちょっと、嬉しい……かも?


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