居候同期とフクザツな恋事情
「あ、ごめん」
ヘラっと笑ったイオに、身勝手にも少しだけムッとする。
本当は「大丈夫だった?」って聞けたほうが、心が広くて好印象なのだろうけど。イオが落としかけたのが、大事にしていたマグだったから。
「いいけど、気を付けてよ。それ、学生時代に留学してたときに、某コーヒーチェーン1号店で買って帰ってきた大事なやつ」
「そっか、ごめんね」
「もういいよ、私がやる」
シュンと肩を落としてしまったイオから、スポンジを奪う。
「それに、イオが洗った分、ほとんどがまだ汚れが残ってる」
「ごめん」
しょんぼりと項垂れているイオの横顔を見ていたら、一瞬だけ湧き上がった苛立ちもすぐに消えていく。
「あんた、いったい何ができるのよ」
まぁ、なにもできなくても、私が結局こうして手を出しちゃうんだけど。
自分にもイオに呆れて苦笑いを浮かべたら、イオがなんだかものすごーく考え込んだ後に、にぱっと笑った。