居候同期とフクザツな恋事情
なにか話すわけでもなく、ずっと隣に立っているイオを気にしつつ、洗い物をどんどん片付ける。
全ての食器を乾燥用のラックに立てかけて、水道の水を止めたとき。
「メェちゃん。今日、ありがと」
イオが小さな声でぽつりとつぶやいた。
「え?」
イオの言っている意味がわからなくて、濡れた手を振りながらしばらくぽかんとする。
「ちょっと……、ていうか、だいぶ元気出た」
顔をあげたイオが、ちょっと泣きそうに笑うから、胸の奥がキュンとする。
あ、そっか。『ありがと』って、今日一緒にパンケーキ食べに行ったことのお礼だ。
元気、出たんだ。
イオの言葉が嬉しくて、その喜びがじわじわと胸に込み上げてくる。
だけど同時に、泣きそうに見えたイオの笑顔が気になった。
元気は出たって言ってたけど、永田さんのことを完全に吹っ切れたわけではないのかもしれない。
イオの気持ちを考えたら、少しだけ心がモヤモヤとした。