居候同期とフクザツな恋事情
5.優しくギュってして。
プレゼン用の商品資料を作っていると、松野くんに声をかけられた。
「在原、まだ帰らないの?」
「うん、もう少し仕事してから帰ろうと思う」
「そっか。あんまり無理せず、適当に帰りなよ」
「ありがとう。お疲れさま」
「お疲れー」
帰り際の松野くんに気まぐれに声をかけられたせいか、残業中なのに俄然やる気が湧いてくる。
プレゼンは来週なのだけど、商品説明や資料画像の魅せ方を細部まで拘っていると、気付けば社内でひとりきりになっていた。
節電のために少し薄暗くなった社内で、ほぼ出来上がりかけのプレゼン資料を初めからチェックする。
頑張っただけあって、なかなか悪くない。
確認を終えて、9割完成した資料を閉じようとしたとき、パソコンの画面の真ん中になにか警告が出た。
疲れていたのもあって、よく見ずに表示された選択ボタンをマウスでクリックしてから、ふと違和感を覚える。
あれ?今、私、変更したデータを上書き保存せずに閉じたかも……