居候同期とフクザツな恋事情


イオに訊かれるままに、資料作成に使っていたソフトや仕様を説明したら、電話越しに彼が笑う気配がした。


「それだったら、もしかしたら少しは復元できるかも。もうすぐ海外事業部に着くから、ちょっと待ってて」

「え?」

予想外にイオの言葉に後ろを振り返ると、事業部のドアをノックする音がして、開いたドアからスマホを耳にあてたイオが顔を覗かせた。


「お疲れさま、メェちゃん」

事業部内に足を踏み入れながら話すイオの声と、耳にあてたスマホから聞こえてくるイオの声ふたつ。響いて重なる。

驚いている私ににこっと笑いかけながら電話を切ると、イオは私のデスクに歩み寄ってきた。


「俺も仕事遅くなっちゃったから、もしメェちゃんがまだ仕事してたらご飯誘おうと思ったんだけど。なんかトラブルみたいだし、連絡してみてよかった」

頑張って作ったプレゼン資料の喪失に気力をなくしていたところだったから、イオの笑顔に少しだけほっとする。


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