居候同期とフクザツな恋事情
「そんなんだから、愛想尽かされたんだよ」
眠っているイオの額に手をあてて、目元にかかる前髪をそろりと撫であげる。
眠りが浅くて寝ぼけているのか、イオは目を閉じたまま気持ち良さげに私の手に顔を擦り寄せてきた。
「永田さんのこと、少しはまだ気になってるくせに。期間限定の同居人なんかにこんなに心許してどうすんの」
無意識とはいえ、完全に警戒心を緩めてしまっているイオの寝顔を見ていると、胸の奥がギュッと痛くなる。
無防備に眠るイオの髪を撫でながら、ふつふつと胸に湧き上がってくる気持ちがなんなのか。認めたくなくても、気が付いていた。
イオがうちに居候してくるまで、私は松野くんのことが好きだと思ってた。
かっこよくて、仕事ができて、優しくて。そんな完璧に見える松野くんに対しての気持ちは、『憧れ』に近かったんだと思う。
私はいつも、松野くんのほうから何かアクションを起こしてくれないかなーと、いつも淡く期待しているだけだった。