居候同期とフクザツな恋事情
そうじゃなくて。自分の気持ちの変化に気付いて、必要以上にイオの一挙手一投足にドキドキそわそわしてしまっているだけなのだけど。
そんなこと、イオには言えない。
イオは違うって言うけど、たぶん少しくらいは永田さんに未練があるし、どうやら昨日の夜、口にした言葉も私を抱きしめたことも覚えてない。
私だけが、このままひとりで意識し続けなきゃいけないのに。
残り一ヶ月ほどの同居期間中、平静な気持ちで過ごしていられるわけがない。
「大変だった」
「え?」
「昨日!家に帰ってきてら、空き缶がいっぱい散らかってるし、テーブルで寝てるイオを布団まで運ぶのは重たかったし。それに、寝ぼけて酔っ払って、永田さんへの未練もグチグチ聞かされたし」
少しでも冷静な気持ちでいられるようにそう言ったら、イオが顔を赤くして恥ずかしそうにうつむいた。
「ごめん、迷惑かけたみたいで……」
「そう思うなら、早く住むところ探しなよね。居候期間は、あと1ヶ月だよ」
イオの顔の前に、ピシッと人差し指を立てたら、それを見つめる彼の表情が固まった。