居候同期とフクザツな恋事情
振り向いて笑ったイオが、ここに来たときに持っていた大きなスーツケースに衣類を詰め込んでいる。
それを目にした瞬間、私の頬がピクリと引き攣った。
「イオ、それ。もしかして、住むところ決まったの?」
スーツケースを指差す手が、微かに震える。
つい最近、居候の期限があと1ヶ月であることを勢いに任せてイオに突きつけてしまったのは私だ。
だけど、まさかこんなに早く出て行くなんて……
見た目には呑気に過ごしてるように見えたのに、実は私の言葉を気にして裏でいろいろと動いていたんだろうか。
徐々に青ざめていく私を、イオが気まずそうに見上げてくる。
「あ、ごめん。それはまだ……」
「じゃぁ、その荷物は?どこか別に行くあてができたの?」
寝室に足を踏み入れて、やや前のめりに訊ねたら、イオがきょとんとした顔で瞬きをした。
「あ、いや。明日から急遽、2泊の出張決まったから」
「出張?」
「うん、出張」
イオがにこりと笑うのを見て、一気に力が抜けた。