居候同期とフクザツな恋事情


「どこ行くの?」

「大阪」

「そっか、大阪……」

無駄にイオの言葉を反芻しながら、安堵で泣きそうになるのをグッと堪えた。

うつむいて、仕切り戸に置いた手にぎゅっと力を入れると、スーツケースのそばに座っていたイオがととっと手と膝をついたままこっちに近づいて来る。


「メェちゃん、俺が出張でいないから淋しい?」

すぐ足元までやってきたイオが、無防備に私を見上げて邪気のない顔でにこっと笑った。

そんなふうに笑いかけられたら、「淋しい」と本音が溢れそうになる。

でもそれを漏らしてしまうと、平穏な同居生活にヒビが入ってしまいそうで怖い。


「淋しいわけないでしょ。だってイオはただの居候だし」

だから、ほとんど自分に言い聞かせるみたいにそう言った。


「だよね」

イオがははーっと声を出して笑う。

その笑顔が眩しくて、胸をときめかせて、それと同時に切なくさせるから、上手に直視できなかった。


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