居候同期とフクザツな恋事情


あと1時間もしないうちに、イオが帰ってくる。そう思ったら、家へと向かう足取りも軽くなる。

自宅マンションが見えてきたところで、勢いのままに駆け出してしまいそうになった私は、エントランスの前に人が立っているのに気が付いて歩を緩めた。

街灯の光に反射してぼやけてはいたけれど、エントランスの前にいるのは向かい合って立っている一組の男女で。男の人の側には大きなスーツケースが置いてある。

それに気付いた私の胸が、ドクンと大きく不吉な音をたてた。

ぼんやりとしか見えないふたりの陰に確証は持てないのに、確信はしていた。


まさか、あれはイオと永田さん────?

嫌な想像に、胸騒ぎが止まらない。

どうして、ふたりがエントランス前にいるんだろう。

帰ってきたところで、偶然鉢合わせたのだろうか。

でもイオは、永田さんの家を追い出されてからは、彼女と鉢合わせないように気をつけて帰ってきているはず。本人が前にそう言っていた。


< 179 / 240 >

この作品をシェア

pagetop