居候同期とフクザツな恋事情
それに、イオと永田さんはつい最近ふたりでご飯を食べに行って、イオが家でやけ酒しちゃうくらいにケンカして別れているはずだ。
だから、仮にエントランスの前にいるのがイオと永田さんだったとしても、ふたりの間に何かあるはずなんてない。
自分に言い聞かせるみたいにそう説得して、買い物袋をギュッと握りしめる。
いずれにしても、私が向こうに足を踏み出せば、反射してぼやけたふたりの影の正体がはっきりする。
それがイオと永田さんだとしても、そうじゃなかったとしても、私はただ堂々と自宅に入ればいい。
そう思いながら足を踏み出したとき、マンションのエントランス前を一台の自動車がゆっくりと走り抜けていった。
そのヘッドライトのせいで、反射してぼやけていたふたりの男女の顔がはっきりと見える。
向かい合って立っていたのはやっぱりイオと永田さんで。イオを見つめる永田さんの横顔は、やけに深刻そうだった。