居候同期とフクザツな恋事情


自動車が通り過ぎていってしまうと、また街灯の光が反射してふたりの顔がよく見えなくなる。

それでも、ふたりのシルエットは私が立っている場所からでもよくわかった。

しばらくすると、スーツケースをつかんだイオが、永田さんから離れようとするのが見えた。

そのことにほっとして、私もエントランスに向かって一歩踏み出す。

だけど次の瞬間、私はまたその場で立ち止まって動けなくなってしまった。

弾けるように前に飛び出した永田さんが、イオに抱きついたから。


どういうこと……?

思考回路が停止して、目の前が真っ暗になる。



そのあと自分がどうしたのか、正直全く記憶がない。

気が付いたときには、さっき買い物したコンビニの前を通り過ぎて、駅前までやってきていた。

持っているのは、スマホと財布の入った小さめのトートバッグ。それから、福神漬けとお菓子とパンが入ったコンビニの買い物袋。

デニムにTシャツ、それからスニーカーという格好でぱっと家から出てきただけの私は、夜の駅前ですっかり途方に暮れていた。



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