居候同期とフクザツな恋事情


イオに抱きつく永田さんを見て、動揺して逃げてきてしまったけど。

どんな顔をして家に帰ればいいだろう。

何も見ていなかったフリをして普段通りイオと接するか、それとも見てしまったことを軽い口調で冗談っぽくイオに伝えるか。

私の中の選択肢はその二択だけれど、いずれにしてもすごく気まずい。

でも、このまま時間が経てばたつほど、帰るタイミングをなくしてしまうような気がする。

ご飯を炊いて、まだ温かいカレーの鍋をコンロに置いてきたから、イオだって私が家にいないことを不審に思うだろう。

気まずいけど、やっぱり帰ろう。

だけど、心を決めて家のほうに歩き出そうとして、ふと思った。


イオは、あのあとちゃんとうちに帰ってきているだろうか。

考えてみたら、イオは永田さんに未練があるかもしれないのだ。

永田さんがどういうつもりだかわからないけれど、もしイオとやり直したくて抱きついたんだとしたら……

イオは、うちではなくて永田さんの家に帰ってしまうかもしれない。

そう思ったら、踏み出しかけた足が怯んだ。


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