居候同期とフクザツな恋事情


「えっと……カレー作ってあるの見た?」

「見たけど」

「よかった。実はカレーを作ったんだけど、福神漬けを買い忘れちゃって。ちょっと買い物に出てるの」

「買い物って福神漬けだけ?」

「そう。あ、お菓子とパンもついでに買ったけど」

「────で?それ、どこまで買いに行ってるの?」

一拍ほど間を置いてそう言ったイオのトーンが、電話越しにはっきりとわかるくらいに下がる。


「近所のコンビニ……」

「近所にたったそれだけ買いに行くのに、何時間もかかるんだ?」

「うん、まぁ。一軒目で見つからなくて、何軒か回ったから」

「ふーん」

咄嗟に嘘を付いた私に、イオが疑わしげな声でそう返してくる。


「じゃぁ、さっき送ってきた『そっちの事情はどうこう』っていう。あのメッセージは何?」

「あー、あれは……気にしないで。他の人と間違えてイオに送っちゃったやつだから」

「ほんとに?」

「ほんと、ほんと」

笑って誤魔化そうとしたら、電話越しにイオのため息が聞こえてきた。


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