居候同期とフクザツな恋事情


「帰ろ」

イオの優しい声の響きに、胸の奥がキュッとなる。

コクンと頷いて立ち上がりながら、私はイオの手を緊張気味に緩く握り返した。

イオに手を引かれてコーヒーショップの出口に向かいながら、胸がドキドキと高鳴って、イオと繋いだ手が汗ばみそうになる。


今まで、イオの手なら何度か握った。

ふざけて腕を絡めたことだってある。

でも、こんなふうに手に汗を握るほどは緊張しなかった。

意識しているかしていないかで、こんなに感じ方が変わるものだったのかと、イオに手をひかれながらぎくしゃくとした動きで彼の後をついていく。


「そうだ、メェちゃん。約束してたお土産、ちゃんと買ってきたよ」

自宅のマンションが目の前に見え始めた頃、私の手を引いて少し先を歩いていたイオが、唐突にそう言った。


「お土産……?」

「え、頼んどいて忘れたの?チーズケーキ」

イオに急に話しかけられて、瞬時に頭が回らない。

ぼんやりとした反応を示した私を振り返って、イオがクスリと笑った。

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