居候同期とフクザツな恋事情
「あ、そっか。そうだ。ありがとう。すぐにわかった?」
「うん。メェちゃんの作ってくれたカレーのあとに、一緒に食べよう」
「そうだね、楽しみ」
迎えに来てくれる前の電話では少し微妙な空気になっていたのに、私に話しかけてくるイオの声のトーンも会話の内容も普通だ。
いつもふたりでいるときの空気とほとんど変わらない。
私が見たことも、電話での会話も、イオの中ではもうなかったことになっているのだろうか。
そうだとしたら、私もちゃんと切り替えないと。
「大阪、どうだった?空いた時間で観光とかしたの?」
「いちおう出張だからねー。そういう時間はほとんどなくて、滞在中は会社とホテルの往復のみだったよ。夜に同僚の人と飲みに行ったくらい」
「そっか。私ももう何年も前に親戚の家に遊びに行って以来行ってないなー」
切り替えて普通通りに。そう思ってイオに当たり障りのない話題を振りながら、ふとコーヒーショップからイオと繋いだままでいる手が気になった。