居候同期とフクザツな恋事情
普通通りにするなら、この手も離さないと。普段通りの会話をするように心掛けたって、この手が繋がっている限り、普通じゃない。
「私がエントランスのキー出すね」
笑いながらさりげなくイオの手を離そうとすると、無表情になったイオが逃げられないくらいにぎゅっと私の手を握りしめてきた。
「イオ、手」
作り笑いを浮かべる私を、イオが神妙な顔付きで見下ろしてくる。
「どうして何も聞いてこないの?」
暗がりの中で、イオの焦げ茶の瞳が鋭く光る。その瞳の色の強さにドキリとして、私はイオの視線を避けた。
「聞いてこないって?」
「いつものメェちゃんなら、遠慮なくいろいろ詮索して、人の傷口エグってくるじゃん」
「別に私は詮索なんて……」
つい、避けた視線をイオに戻したら、彼が私のことを見つめて僅かに口元を歪めた。
「じゃぁ、俺が勝手に話していい?」
静かにイオに問いかけられて、どんな反応を示せばいいのかわからない。
黙り込んでしまった私を見て、イオが表情を歪めて困ったように笑った。