居候同期とフクザツな恋事情
「メェちゃんも早く帰っておいでよ」
やや感情的な光を宿した焦げ茶の瞳が、低く掠れた声が、私の胸を甘く痺れさせる。
まだ後頭部に回されたままのイオの手のひらが熱い。
「なるべく、そうする……」
そう言うと、イオが口端を引き上げて、満足そうに微笑んだ。
私の髪を、頬を撫でるようにするりと落ちてきたイオの右手が、目の前ですっと小指をたてる。
「メェちゃん、約束」
差し出された右手の向こうで、悪戯っぽく、けれど綺麗に笑いながら、イオが甘く優しい声で私を誘う。
流されるままに、私の右手の小指を近付けると、細くて綺麗なイオの指がギュッと力強く絡み付いてきた。
ドキリと胸を揺らす私を見上げたイオが、名残惜しげに指をほどきながら笑う。
「引き止めてごめん。メェちゃん、もう出かけるんだよね。俺ももう起きる」
「うん」
小さく頷いたものの、私はどうしようもなくイオのそばから離れ難くなってしまっていた。