居候同期とフクザツな恋事情
右手の小指の先に、まだほんのりとイオの熱が残っているような気がして。その熱が私をイオのそばに縛りつける。
無言で右手を見つめたままでいると、起き上がって布団に座ったイオが首を横に傾けた。
「メェちゃん、時間大丈夫?」
そうだ、時間。今日は早めに行って仕事しようと思ってたのに……
このままひとりで先に出かけるのが、少し淋しい。
「あと10分したら出ようかな」
ぽつりとつぶやいたら、イオが驚いたように大きくひとつ瞬きをした。
「10分後でいいの?」
「いいっていうか……」
単純に、早く出社しようという意欲が削がれたのだ。
「じゃぁ、念押ししとこっかな。メェちゃんが早く帰ってくるように」
布団に手をついて一歩二歩と寄ってきたイオが、私の顔を下から覗き込んでにこりと笑う。
その笑顔に思わずぱっと顔を赤らめたとき、イオが下から啄むようにキスをしてきた。