居候同期とフクザツな恋事情



「いって。仕方ねーじゃん。スーツケースの中から着替え出し忘れたんだから」

「出し忘れないでよっ!」

私は顔を赤くして喚くと、仲林くんがいるダイニングルームとの仕切りになっているスライドドアを勢いよくバンっと閉めた。

もうそれで仲林くんの姿は見えないのに、それだけではまだ足りないような気がして、ドア越しに彼に背を向ける。


「ていうか、この部屋に住むならお風呂上がりでも裸でうろつかないで。女子に対してのデリカシーがなさすぎる」

「あー、そっか。ごめんね」

ドアの向こうの仲林くんに向かって文句を言うと、スーツケースを開ける音と共にあまり心のこもっていなさそうな謝罪の言葉が聞こえてきた。

寝室にあるもうひとつのクッションを引き寄せると、膝の上でギュッと抱きしめる。

別に仲林くんのことを異性として意識してるとかそういうわけではないけども。

仮にも会社や同期の仲間内ではイケメンだと名が通っている彼の裸を目の当たりにして、動揺せずにいられるはずない。


「あー、そっかじゃないし」

ブツブツと小声で文句を言っていると、着替え終わったのか後ろでスライドのドアが開いた。

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