居候同期とフクザツな恋事情
「ここ、カップ出しとくから、欲しかったら勝手にコーヒー淹れて飲んで」
「んー」
「このコーヒーメーカー、保温機能が付いててしばらくしたら勝手に消えるけど、もし全部飲んでポットが空にするなら、ちゃんと電源切っといて。危ないから」
「んー」
出勤準備を整えた私は、寝ぼけ眼で廊下に立って歯磨きをしている仲林くんに、早口であれこれと指示を出す。
だけど、さっきからずっと同じ位置でシャカシャカと歯ブラシを動かしている仲林くんは、全く私の話を聞いている気配がなかった。
もういいや。ほんとに、時間なくなる。
カバンを肩にかけて、玄関の上に置いた小さな飾り皿から玄関のスペアキーを取り出す。
仲林くんにそれを渡して家を出ようとして、洗面所の水道が蛇口全開でジャージャーと勢いよく流れ出ているのに気が付いた。
「使ってないときは、水止める!」
洗面所の蛇口をギュッと閉めて仲林くんを睨む。
でも、返ってきたのは「んー」というやる気のない声だけだった。