居候同期とフクザツな恋事情
「これ、鍵」
仲林くんのほうに乱暴にスペアキーを突き出すと、歯磨きを終えたらしい彼が、それを受け取って、閉めたばかりの蛇口を捻る。
今止めたばかりなのに、水道の蛇口はすぐまた全開だ。
あぁ。なんかもう、いろいろ面倒だな。
「私はもう出るから、鍵はちゃんと閉めて出てね」
「んー。いってらっしゃい」
そう言って洗面所から手を振る仲林くんは、相変わらずマイペースだ。
この人、仕事に間に合うの?
そういえば、うちの兄も子どもの頃は毎朝マイペースだった。
朝起きるのが遅いのに、ものすごーく時間をかけて朝ご飯を食べたりとか。
トイレに入ってると思ったら、用を足すわけでもなく蓋をした便器の上でぼーっと座ってたりとか。
洗面所に歯磨きしに行ったと思ったら、鏡見ながら髪の毛を何分も弄ってたりとか。
毎朝、毎朝、家を出るのがギリギリで、お母さんがイライラして怒ってたっけ。