居候同期とフクザツな恋事情



だけど、たとえ他にメンバーがいてもまた週末に職場以外で松野くんに会えるなんて幸せなことだ。


「うん、大丈夫だよ」

ガッカリしていることを悟られないように明るい笑顔を見せたら、松野くんも優しい表情で笑い返してくれた。


「じゃぁ、来週明けには時間とか店決めて連絡する」

「ありがとう。待ってるね」

「お祝いとか言いながら、真希子さんも滝宮さんも理由つけて飲みたいだけなんだろーけど」

僅かに距離を詰めてきた松野くんが、私にだけ聞こえるように小声でつぶやく。

いつも隙がなくて大人な雰囲気のある松野くんが、珍しく不貞腐れたように顔を顰めるからつい笑ってしまった。


「もし店探しに難航したら、いつでも言って」

「ありがとう」

さっき詰めた距離の分だけ遠かった松野くんが、隙のないいつもの表情に戻って柔らかく微笑む。

その笑顔につい見惚れていると、突然鞄の中でスマホが鳴り始めた。


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