居候同期とフクザツな恋事情
「あれ、電話だ」
鞄の中をごそごそと漁ってスマホを取り出してみると、かけてきているのはイオだった。
なんの用だろう。
通話ボタンを押す前に数秒考えていたら、着信が切れた。
そのあとすぐに、メッセージが届く。
『急な会議入った』
『布団の受け取り、お願い』
取り急ぎ送ってきたというのがわかるイオからのメッセージに、つい眉間を寄せる。
「ごめん、帰る前に引き止めて」
スマホを見つめて難しい顔をする私を、松野くんが気遣ってくれる。
「あ、ううん。大丈夫」
慌てて眉間を緩めたけれど、もう松野くんは私から離れていきそうな雰囲気で。これ以上の彼との会話は望めなさそうだった。
「じゃぁ、お疲れ。また来週」
「お疲れさま」
軽く手を挙げて去ろうとする松野くんに、私も小さく手を振り返す。
デスクに戻っていく彼の背中を見送ると、私はイオからのメッセージに『了解』のスタンプを返した。