居候同期とフクザツな恋事情
「その顔、絶対何も考えてなかったよね。ていうか、家探さなきゃいけないってこと、忘れてたよね?」
声のトーンを落としてジロっと睨むと、イオがあははーっとわざとらしく笑う。
「忘れてないよ。忘れてないけど、2ヶ月の猶予があるし、まだそんな急がなくてもいいかなーって」
イオがそんな言い訳をしながら、私の顔色を窺うようにこてっと首を横に傾ける。
その仕草に一瞬絆されそうになったけど……
そんな、ちょっと可愛く首を傾げて見せたって、「そっかー、そうだったよねー」なんて言わないから。
無言の圧をかけると、イオは私に背を向けてマンションのほうへと走って逃げた。
「あ、ちょっと!」
すぐにあとを追いかけたら、イオがマンションのエントランスから数メートル離れたところで急に立ち止まる。
まさかそんなところで急停止するとは思ってもみなかったから、真っ直ぐにイオの背中を追いかけていた私は、その背中に思いきり顔から衝突した。