赤い毒は愛の証
「あのリンゴの木がお気に入りなんだ。五月中旬に綺麗な白い花を咲かせるんだよ」

「リンゴは赤いのに、花は白いのね?」

赤い花が咲くのだろうと思っていた雪は少し驚く。誉はにこりと笑って雪の頬を撫でた。

「リンゴの花の白は雪の肌で、赤い果実は雪の唇の色だよね」

そう言った後、誉はお屋敷の扉を開ける。お屋敷の中は玄関だけでも豪華な調度品が置かれ、雪の緊張は高まった。

「お邪魔します……」

扉がゆっくりと閉まっていく。雪は調度品に目が釘付けになってしまい、ニヤリと誉が笑ったことに気付かなかった。



雪は二階にある誉の部屋へ案内された。お屋敷の廊下には豪華な調度品が置かれ、高そうな花瓶には真っ赤なバラが飾られている。

「すごい……」

予想以上の豪華さに、雪はあちこちに目線を移してしまう。その様子を見て誉がクスクス笑った。

「このお屋敷、気に入ってくれた?一緒に雪と暮らせたらもっと嬉しいんだけど」
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