その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「教育担当なんて、可愛い新人女子との恋が生まれるかもですよね。羨ましい」
ふーん。そんな噂がたつくらい可愛いのね、今年の新人さん。
ニヤニヤと広沢くんを揶揄う秋元くんを呆れ顔で見つめてから、さりげなく広沢くんに視線を向ける。
興味なさげに秋元くんの話を聞いていた広沢くんは、私と目が合うと周囲に気付かれない程度にほんの少し口端を引きあげた。
「へぇ。そんな可愛いんなら、楽しみだな」
秋元くんの話にノッた彼が、私の反応を窺っているのがわかる。
私がその程度で動揺するわけないでしょ。
冷たい視線を返したら、広沢くんが小さく肩を竦めた。
「そりゃ、若いし、何やったって可愛いだろうけど。仕事とプライベートはわけてね、広沢くん」
平静な態度を保っている私とは違って、渡した資料をバンッとデスクに乱暴に置いた秦野さんの声色は穏やかじゃない。