その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―



「企画部長に、参加するかどうか希望を聞かれたんだけど……結果的には断ったの」

「え、どうしてですか?」

「今回のプロジェクトはなるべく若手の社員の意見を多く取り入れたほうがいいと思って」

「ふーん」

「それに、本社から来るプロジェクトリーダーが私の同期なのよ。だからそういうのもあって──……」
「その人のことをたてるために、気を遣って遠慮したんですか?」

「うーん、まぁ。そう、ね」

先回りして訊ねてくる広沢くんに曖昧に言葉を返したら、彼が靴を脱いで玄関にあがった私を正面からぎゅっと抱きしめてきた。


「つまんない。俺、その仕事、れーこさんと一緒にしたかった」

私の耳元でつぶやくその言い方が、駄々をこねてる子どもみたいでちょっと可愛い。


「でも、断った理由はそれだけじゃなくて。広沢くんがプロジェクトのほうに手を取られるあいだ、新入社員を指導する秦野さんの負担も大きくなるでしょう?私はそっちのサポートに回ろうと思ってる」

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