その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「ふーん」
手を伸ばして、まだちょっと不服そうにしている広沢くんの頭の後ろをそろっと撫でてみたら、私の首筋に顔を埋めた彼が、くすぐったそうに笑う。
「それに……」
本社からプロジェクトリーダーとしてやってくる予定の同期。実はその彼のことが、入社時からちょっと苦手なのだ。
ついでにそれも伝えようとしたら、急に広沢くんがぱっと顔を起こした。
「そういえば俺、来週のどこかで飲み会行きます。秋元が、若手で飲みに行こうって」
「そう」
「れーこさん、反応薄い」
広沢くんが不貞腐れた顔で、私をジトっと睨む。
「だって、他にどう反応したらいいの?」
「別に。その飲み会、秦野とか菅野さんとか、女子社員も誘われてるみたいだから。いちおう、れーこさんに伝えとこうかなーって」
「それは、どうもありがとう」
ここ最近、社内の飲み会関係でいろいろあったからだろうか。
ふっと思い出し笑いをする私を、広沢くんは不服そうにジッと見ていた。