その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―


他の女の子と笑って話しているだけで広沢くんの気持ちを疑ったりはしないけど。

周囲にいろいろと誤解されるのは、彼の対応にだって問題があるんじゃないか。そう思って、少しイライラした。


「碓氷さん?」

ひとりで怖い顔をしていると、菅野さんに名前を呼ばれた。

ハッとして眉間を緩めると、菅野さんが少し困ったように笑う。


「あの、私たち、今から2軒目行こうかって話になってるんですけど。もしよかったら、碓氷さんと大森さんも一緒にどうですか?」

菅野さんが私たちにそう誘いかけてくれたとき、こちらを振り向いた広沢くんの顔が微妙に引き攣った。

広沢くんだけじゃない。そこにいた若手社員数名の表情が微妙そうに歪むのを、私はちゃんと見逃さなかった。

もっとも、広沢くんが顔を痙攣らせた理由と、他のメンバーたちがそうした理由は全く違うのだろうけど。

他の若手メンバーたちは、気楽な飲み会に上司が参加したら気疲れするからで。広沢くんは、私が大森くんと一緒にいたことを不審に思ってるから。

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