その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
菅野さんの誘いはありがたいけど、そこに私と大森くんが参加するべきではなさそうだ。
「ありがとう、菅野さん。でも私たちは────……」
大森くんが余計なことを言い出す前に断ろうとしたら、彼がなんの予告もなく、私の肩に腕を回してぐいっと引き寄せた。
よろけた身体が大森くんの胸にぶつかり、驚いて目を見開く。
大森くんはそんな私に目配せすると、私の肩を組んだまま菅野さんに笑いかけた。
「誘ってくれてありがとう。でも、今日は俺たちは遠慮するから、若手で楽しんできなよ。俺たちもひさしぶりに、同期で親睦を深めたいし。な、碓氷」
おそらく、大森くんは彼なりに、若手社員たちを気遣ったつもりなんだと思う。
私や本社からプロジェクトリーダーとして来た彼が若手の飲み会に合流しても、気を遣わせて雰囲気を崩すだけだから。
だとしても。もうちょっとマシな断り方はなかったのか……