その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「急にわけのわからないことするの、やめてくれない?ものすごく恥ずかしかったんだけど」
「いつも仏頂面してるんだから、たまには恥ずかしがってる顔でも見せたといたほうがいいって」
ワイングラスを持ち上げながら、悪びれなくけらけら笑う大森くんに腹が立つ。
苛立ちと呆れの入り混じったため息を吐いたとき、もう立ち去ったかと思っていた若手社員たちのグループのほうから視線を感じた。
ふと振り向くと、店の出口のところでまだ何人か固まっていて。そのなかにいた広沢くんと、視線がぶつかった。
あぁ、これはきっと。いろいろ怒っているだろうな。
無表情で私をジッと見つめる広沢くんの眼差しに、小さく身震いをする。
私はカバンからスマホを取り出すと、ひとまずメッセージを送った。
『ごめんなさい。あとで、ちゃんと話す』
送信するとすぐに、彼が私から視線を外してカバンからスマホを取り出す。
画面に通知された表示を見ているみたいだったけど、送ったメッセージに既読はつかなかった。