その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
相手は私が長期でお世話になっている取引先からで、仕事の依頼をしたいという。
またご挨拶に伺う約束を取り決めてから、静かに電話を置く。
ちょうどそのとき、大森くん率いるプロジェクトのメンバーがミーティングルームから戻ってくるのが見えた。
そのなかに広沢くんの姿を見つけて、つい視線を外してしまう。
昨夜、大森くんと一緒に飲みに行ったことについて広沢くんにちゃんと話をしたかったけれど。
朝になっても、広沢くんは私のメッセージに返信をしてこなかった。
メッセージは既読になったから、ちゃんと話したいという私の意志は伝わっているはずだけれど。
彼のほうに何か意図があって返信してこないのかもしれない。
そう思ったら、私からそれ以上にコンタクトを取りにくかったし、今朝は社内でも顔を合わせずらかった。
なるべく最低限の関わりで済むように仕事をしよう。
心の中でため息を吐くと、広沢くんの目に止まらないようにそっと部署から抜け出した。