その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―


「はー。昨日の飲み会でも、全く私に興味示してくれなかったなー」

ドアが半開きになった会議室に入ろうとしたら、中から新城さんの話す声が聞こえてきた。


「興味って……広沢さん?」

すぐに、呆れたような桐谷くんの声が聞こえてきて、ドアノブに手をかけた状態で足を止める。


「そう。だって、秦野さんと付き合ってないんだよね。なのに、どうして私のアピール、ことごとく無視なんだろう」

「やりすぎなんじゃない?」

「でも、いつもならそろそろ、向こうから気にして声かけてきてくれたりするんだけどなー」

「いや。誰でも自分がアプローチすれば靡くって思ってる新城が、そもそも自意識過剰じゃない?」

「そうかな。この会社で私に必要以上に優しくしてくれないのって、桐谷くんくらいだよ。あとは、広沢さん」

不貞腐れたような可愛い新城さんの声が、広沢くんの名前を口にするから、中に入るタイミングを失ってしまう。

どうしようか、と困っていたら、桐谷くんがふっと新城さんのことを蔑むように笑う声がした。

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