その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―


なんだかよくわからないけど、ふたりの会話はこれで終了なのだろうか。


「そんな言い方するなんて。桐谷くん、なにか知ってるんだ?広沢さんの彼女って、やっぱり社内の人なの?」

恐る恐る、ドアを押し開けようとしたとき、また新城さんが話し始めたからドキっとしてドアノブから手を離す。

以前に桐谷くんは、私と広沢くんのことを絶対に言わないと約束してくれたけど。

新城さんが、ただのあざとい新入社員じゃなくて、勘も鋭い子だったら……この状況は、結構危ない。


「知らないよ。だけど、秦野さんでもなくて、新城にだって目もくれないんだから、きっとみんなが意外に思う人なんだろうなって思ってるだけ」

ドアの外で息を潜めていると、桐谷くんが上手に新城さんを交わしてくれた。


「意外に思う人かー。社外かもしれないし、他部署の人かもしれないけど。意外ってとこだけ拾えば、もし『碓氷さん』だったら一番意外かも」


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