その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
桐谷くんが上手に交わしてくれたと思ったのに、クスクスと笑う可愛い声とともにそんな言葉が聞こえてきたから、ドアの外で息が止まりそうになった。
今まで甘くみていたけれど、新城さんはすごく感が鋭い。
もう中に入ることは諦めて、何も聞かなかっことにして引き返したほうがいいかも。
そっとドアに背を向けかけたとき、新城さんの笑う声が止む。
「だけど、碓氷さんは絶対ないでしょ。いくつか知らないけど、もうおばさんだし?それに、大森さんと付き合ってるっぽかったじゃん」
少し人をバカにするような新城さんの物言いに、頬がピクリと引き攣った。
広沢くんの彼女が私だったら、意外性はある。だけど、現実に彼の隣に私がいることは想像もできない。そういうこと、よね。
広沢くんとの付き合いを隠しているくせに、私は新城さんの言葉に思ったよりもショックを受けていた。
「あーあ。昨日は結局なんの進展もなかったし。また秋元さんに、飲み会のセッティング頼もうかなー。今度はもっと少人数して、もっと広沢さんに近付けるように……」
「まだ諦めてないの?」