その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「当たり前じゃん」
呆れた声で口を挟んだ桐谷くんに、新城さんが強気な声で応える。
「だって、せっかく広沢さんと私がいい感じになってるっていう噂を広めたんだよ?それに、秦野さんには負けられない」
「噂、広めたって……新歓の帰りに広沢さんが新城のこと送っていって…っていう、あれ。もしかして、新城があることないこと言いふらしたの?」
「あることないこと、って。桐谷くん、言い方ひどいなー。私はちゃーんと、広沢さんにオフィスの最寄り駅まで送ってもらったんだよ?だから、『飲み会帰りに広沢さんに送ってもらっちゃった』って、何人かに伝えただけ」
「意味ありげな感じで?」
冷たい声で問いかける桐谷くんを揶揄うように、新城さんがクスクス笑う。
「だって、秦野さんには負けたくないし?あのひと、いつも私にキツい口調で仕事押し付けてくるんだもん」
「ふーん」