その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―




会議室での作業を終えてデスクに戻ってくると、偶然立ち上がった大森くんと目が合った。

無言で顔を逸らそうとしたら、ニカっと笑った大森くんがズカズカと近付いてくる。


「碓氷、昼メシもう食った?」

「ま、……」

正直に答えかけてすぐに、嫌な予感がして口を噤む。

だけど、何も応えていないのに、大森くんは笑顔で私の肩をポンポンと気安く叩いてきた。


「だよなー。この辺で美味いランチの店教えてよ」

「プロジェクトメンバーの誰かを誘えば?」

冷たくそう答えたけど、私の反応なんていつもどうでもいい大森くんは、私の肩に手を載せたままにこにことしていた。


「そうだな。プロジェクトメンバーも誘うわ」

「も?」

「うん」

大森くんの言い方に引っ掛かりを感じて首を傾げる。

その間に、彼は私からサッと離れて広沢くんと菅野さんに話しかけにいっていた。


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