その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「広沢くん、菅野さん。今から碓氷とランチ行くけど、一緒にどう?」
にこにこ笑顔でふたりを誘う、大森くんの大きな声が聞こえてきてギョッとする。
『も』、って。もしかして、そういうこと……?
プロジェクトチームメンバーの、広沢くんと菅野さんを誘うから、私抜きで行ってくれたらいいのに。
顔を痙攣らせていると、広沢くんと菅野さんがほとんど同時に私のことを見た。
私を見て一瞬ニヤッとする菅野さんと、無表情で私を見る広沢くん。
対照的なふたりの表情の、両方ともが気にかかる。
「お誘いは嬉しいんですけど、私たちが行ったらお邪魔じゃないですか?」
私を気にしながら大森くんに伺いをたてる菅野さんの表情を見て、これは昨夜のことを完全に誤解されているなと思った。
たぶん菅野さんは、私と大森くんが『付き合ってる』と思っているんだろう。
「邪魔なんかじゃないよ。昨日は若手飲み会の邪魔しちゃ悪いかなーって思ったけど。短期間でもプロジェクトメンバーとの親睦も深めたいしね」
菅野さんの言葉をそのまま素直に受け取って、にこにこ応えている大森くんに、苦笑いが溢れる。