その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
結婚が決まっているのに、私なんかと変な誤解されて大丈夫だろうか。
相手は社内関係じゃないみたいだから、下手に話が伝わる心配はないだろうけど。
まぁ、大森くんはそもそも、そんなこと気にもしないか。
「どうします?広沢さん」
菅野さんに判断を委ねられた広沢くんが、ジッと私を見つめてから大森くんに向き直る。
それから、他所行きの顔で大森くんに微笑んだ。
「お誘い、ありがとうございます。大森さんと碓氷さんがいいなら、ご一緒させてください」
「もちろん。いいよなー、碓氷」
パッとこちらを振り向いた大森くんが、まだ大きな声で話しかけてくる。
ご一緒、しちゃうのか。それよりも、私をそのメンバーから除外してもらいたい。
だけど、そんなことを言えるような雰囲気でもなく。仕方なく苦笑いで頷く。
そんな私を見つめる広沢くんの顔からは、既にそれまでの他所行きの笑顔は消えていて。
そのことが、少し怖かった。