その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
複数人で参加する飲み会ですら、私にいちいち報告をしてくれていた広沢くん。そんな彼が、今回ばかりはすぐに私のメッセージに返信してこなかった。
そのことが私に最悪な事態を想像させて、彼からのメッセージを開くのが少し怖い。
これまでは、付き合ってきた人との関係が悪くなりかけてもほんの少し心が痛むくらいで。
そうなってしまった結果を冷静に受け止めることができた。
それなのに今は、時間を空けて返ってきたメッセージを開くくらいでこんなにも不安を感じている自分が滑稽に思えた。
短く息を吐いて、思いきってメッセージを開く。
ある程度の覚悟は決めていたけれど、その内容を見た瞬間に一気に肩の力が抜けた。
『れーこさんと大森さんのこと、ちょっとだけ疑いました。ごめんなさい。今日の夜、れーこさんち行っていい?』
ふと広沢くんのほうを見ると、彼はもうノートパソコンを開いて仕事を始めている。
真剣な顔付きの広沢くんから手元のスマホに視線を移すと、一言だけ、彼にメッセージを返しておいた。