その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「朝から言動がおかしいのよ。私はもう、起きるから」
「えー、まだ大丈夫なのに」
広沢くんの唇が当たった頬を、照れ隠しに手のひらで撫でて、布団の中で彼に背を向ける。
「起きる」と宣言したくせに、ベッドから身体を起こさずにいると、広沢くんが背中から抱きしめてきた。
「れーこさん、起きないの?」
黙っていると、広沢くんが耳や首の後ろに唇や舌を這わせて、地味な悪戯を仕掛けてくる。
しばらく無視していたけれど、そのうち広沢くんの手が内腿を撫で始めたから、その手をつかまえて振り向いた。
「れーこさん?」
目を細めて優しく笑いかけてきた広沢くんが、ひどく愛おしげに私を呼ぶ。
その表情を見たら、押し留めていた理性が一気に飛んでいきそうになった。
腕を伸ばして広沢くんの頭をギュッと抱きしめる。
「好き……」
そのまま耳元にささやいたら、広沢くんがヒュッと息を飲み込む音がした。