その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「好き、って。朝、するのが?」
両手で私の頬を包んで顔をあげさせた広沢くんが、揶揄うようにクスリと笑う。
「違う。り、つ……がっ!」
人がせっかく、好意を口にしたというのに。
眉間を寄せて睨み下ろしていると、広沢くんが綺麗に微笑んで私の頭を引き寄せる。
広沢くんの肩の辺りに顔を埋めるように倒れ込んだとき、彼が私にささやいた。
「俺もれーこさんが好きです。すげー好き」
その言葉が胸にグッときて、思わず涙が出そうになった。
広沢くんの肩に顔を擦り寄せて頷くと、彼が私の頭をより強く引き寄せる。
「ねぇ、れーこさん。今日はもう、仕事ずる休みでいいですよね?」
「それは、ダメ」
耳元でささやかれた甘い誘惑に、流されるままに頷きそうになったけれど。ギリギリのところで私の理性がそれを引き留めた。
「え、今、すごいいい感じだったのに。じゃぁ、ちょっと遅れて行く?」
「それもダメ!」
「えー」
不満気な広沢くんにごねられた結果、ふたりでオフィスに滑り込んだ時間は始業ギリギリだった。