その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
上司の選択と部下の決断
I
大森くん主導のプロジェクトが無事に終わって1週間が経った頃。
企画部長にミーティングルームに呼ばれた広沢くんが、長いことデスクに戻ってこなかった。
しばらくしてようやく戻ってきたかと思うと、真っ直ぐに自分の席には戻らずに私のところにやって来る。
「碓氷さん。部長が、話したいことがあるから、ミーティングルームに来るようにって」
「私に?」
「はい」
「今すぐ?」
「はい、急ぎの用がなければ」
「急ぎの用事はないけど……」
わざわざ広沢くん経由で呼び出されるなんて、なにかあったのだろうか。
「そんな警戒するような話ではないと思うんで、大丈夫ですよ」
突然の企画部長の呼び出しに怪訝な表情を浮かべていると、広沢くんがクスリと笑う。
彼のその一言に、妙な引っ掛かりを感じながらも、私は企画部長の待包みミーティングルームへと向かった。